○夜道・車内(夜)
N:あれは去年の夏。
俺にとっては、二度と思い出したくない夜だった。
【登場人物】
俺(25・普通の青年)
A(25・リーダー気質)
B(25・お調子者)
C(25・冷静)
(車内、男4人が談笑しながら走っている)
B:(笑いながら)なあ、どこ行くんだよ?ノープランすぎだろ。
A:(前を見つめて)長野って言ったら温泉だろ。
でも、飯食って帰るだけかもな。
C:(窓の外を見ながら)ま、ドライブできりゃいいだろ。
俺:(苦笑しながら)…なんか、この道、狭くなってきてないか?
(車内、微妙な空気。
ヘッドライトが照らす道、ガードレールは錆び、雑草が生い茂る)
A:(不安げに)なあ、これ…道おかしくないか?カーナビ合ってるよな。
俺:(スマホを確認しながら)一本道にはなってるけど…誰も走ってねーな。
SE:車のエンジン音、外は静寂
(全員、不安げに黙る)
C:(小さく)…ちょっと、どっかで停まってルート確認しね?
(前方にぼんやりとした明かりが見える)
B:(ホッとしたように)あ、ドライブインだ。
助かったー。
○ドライブイン・駐車場(夜)
(駐車場には数台の車が停まっている。
男たちは車から降りる)
A:(周囲を見渡して)誰もいないな…でも自販機はある。
B:(笑って)腹減ったし、飲み物買ってくるわ。
(AとCはトイレへ、俺とBは自販機コーナー隣の休憩所へ向かう)
○ドライブイン・休憩所前(夜)
(入り口の扉の近くに、掌より大きな蛾がとまっている。
羽の模様が人の顔のように見える)
俺:(ぎょっとして)(声を潜めて)…なんだよ、あの蛾。
でかすぎるだろ。
B:(目を逸らして)見なかったことにしようぜ…
○ドライブイン・休憩所内(夜)
(中は薄暗く、テーブルは汚れ、奥には古びたゲーム機。
50代くらいの男がテレビを見ている)
俺:(Bに小声で)なんか、雰囲気おかしくね…?
B:(急に声を上げて)おい、見ろよ!あっちに女の子3人組がいるぞ!
(テーブル席に20歳前後の女性3人。
顔色が悪く、不安そうに話している)
B:(嬉しそうに)声かけようぜ、な?
(1人の女の子がこちらに気づき、俺たちに近づいてくる)
○同・休憩所内(続き)
女の子A(20・儚げ):(おそるおそる)あの…ここって、関東方面に抜ける道で合ってますか?それと…このドライブイン、なんか変じゃないですか?
俺:(戸惑いながら)…俺たちも、なんか変だと思ってた。
B:(ニヤついて)やるじゃん、お前。
(もう1人の女の子が話し始める)
女の子B(20・小柄):(不安げに)あそこのテレビの前にいる人、なんかおかしくないですか?
(俺たち、テレビを見ている男を見る。
男の体が異様に大きく、3〜4mはありそうだ)
B:(震え声で)で、でかすぎる…なんだあれ…
女の子C(20・長髪):(指をさして)あの奥のプリクラの所も…。
(カーテンの下からロングスカートの女の脚が見え、微動だにしない)
女の子A:(耳を澄ませて)…あと、変な声、聞こえませんか?たくさんの人が話してるみたいな…。
SE:ざわざわと話し声のようなノイズ
○ドライブイン・自販機コーナー(夜)
(休憩所のドアが開き、AとCが戻ってくる)
C:(呆れたように)お前ら、ナンパかよ…。
A:(真顔で)そんな場合じゃねえ。
変なの見つけた。
来てくれ。
○同・自販機コーナー(続き)
(カップ式コーヒーの自販機。
液晶画面に生身の口が現れ、「いらっしゃいませ」と喋る)
SE:不気味な機械音、そして「いらっしゃいませ」の声
C:(苦笑しながら)最初、人が入ってるのかと思って叩いたけど、反応ねぇんだ。
俺:(声を潜めて)ここ、絶対おかしい。
今すぐ出よう。
○ドライブイン・休憩所(夜)
(女の子Aが俺の肩を揺すりながら、動揺した声で指差す)
女の子A:(震える声で)ちょっと、あれ見て!
(プリクラの所にいた女が、こちらに向かって歩いてくる。
上半身がなく、下半身からは棒のようなものが伸びている)
SE:異様な足音
(全員、凍りつく。
女はユラユラ揺れながらトイレの方へ消えていく)
○ドライブイン・駐車場(夜)
(全員、慌てて外へ駆け出してくる)
俺:(息を切らせて)…やばい、ここ絶対やばいって!
A:(冷静を装いながら)カーナビ通りなら、この先行けば街に出られる。
早く出よう。
(女の子たちに車でついてくるように話す)
(駐車場の奥の林から、大勢の人影が現れ、こちらへ向かってくる)
B:(声を震わせて)なんだよ、あれ…
(林から何か巨大なものがジャンプし、トラックに激突。
ガラスが割れ、地面に1m以上の巨大な蛆が蠢く)
SE:ガラスの割れる音、ぬめった跳ねる音
(他にも7〜8匹の巨大な蛆が飛び跳ねている)
C:(叫んで)早く車に!急げ!
(女の子たちはパニックになり、プレハブ小屋に逃げ込もうとする)
俺:(怒鳴って)いいから車に乗れ!
(4人で女の子たちを引き戻し、車に押し込む。
Bがもう1台の車を運転、2台でドライブインを脱出)
○山道(夜)
(2台の車が必死に走る。
後ろにはジャンプする蛆が追いかけるが、やがて見えなくなる)
○公園・駐車場(深夜)
(1時間後、街の灯りが遠くに見え、駐車場で車を止める)
C:(スマホで通話しながら)女の子たち、トイレ行きたいって。
ちょっと停まるぞ。
(女の子たち3人がトイレへ急ぐ)
俺:(女の子の車を覗き込む。
ドアが開いており、バッグの中身がぶちまけられている)
俺:(Bに向かって)これ戻さねーとまずくね?
(A、B、Cがトイレから戻る)
A:(困惑して)トイレ、誰もいなかったぞ?すれ違ったのかも。
(全員、不安そうに顔を見合わせる)
俺:(声を潜めて)…警察、呼ぶか。
○同・駐車場(しばらく後)
(パトカーが到着。
警官が事情を聞く)
警官(40代・厳格):(訝しげに)女の子たちの車って、どれ?
(振り返ると、女の子たちの車は消えている)
B:(声を詰まらせて)…そんな、さっきまであったのに…
(俺、屋根の上に置きっぱなしのバッグを差し出す)
俺:(必死に)これ、彼女たちのです。
探してください…
(警官、あきれ顔でバッグを受け取る)
○警察署・取調室(数日後)
N:後日、バッグが10年以上前に失踪届の出ていた短大生のものだと判明した。
(事情聴取を受ける俺たち)
警官:(写真を見せながら)この人、見覚えあるか?
俺:(写真を見て、呆然とする)…この子だ。
あの時の女の子と同じ顔…
(警官は「君たちが通った道にドライブインはなかった」と言う)
N:現場検証でも、荒れた道も、ドライブインも、見つからなかった。
○俺の部屋(夜)
(俺、窓の外を見つめながら、深いため息をつく)
俺:(心の声)…彼女たちは、本当に俺たちと同じ世界にいたのか?プレハブ小屋に隠れていたら…俺たちは今、ここにいなかったかもしれない。
(BGM:静かな不安の旋律)
N:今も、あの夜の真実は闇の中だ。
だが、あの異様な出来事と彼女たちの瞳だけは、決して忘れられない。
(画面暗転)
不思議な話:境界線のドライブイン 〜消えた夏の記憶〜
境界線のドライブイン 〜消えた夏の記憶〜
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