「草花泥棒」被害相次ぐ住宅街　ガーデニング愛好家に広がる困惑と工夫

■住宅街で相次ぐ「草花泥棒」被害――ガーデニング愛好家の苦悩と対策

5月中旬、都内近郊の閑静な住宅街で、個人宅の庭や鉢植えの草花が何者かに盗まれる被害が発生している。
本紙が現地取材を進めたところ、ガーデニングを趣味とする主婦Aさん（40代、仮名）が、自宅の草花や鉢植えを繰り返し盗まれる被害に遭っていることが分かった。
Aさんは「丹精込めて育てた植物が無断で持ち去られることに憤りを感じる」と語る。

■警察は「草花くらいで」と消極的対応

被害の詳細についてAさんによると、今年3月ごろから、自宅の花壇や鉢植えから植物が引き抜かれたり、鉢ごと持ち去られたりする被害が続いているという。
Aさんは警察にも相談したが、「草花くらいで事件として取り扱うのは難しい」との説明を受け、十分な対応は得られなかったと明かした。

■「やめてほしい」と札で訴えも効果なく

Aさんは「せめて気持ちだけでも伝えたい」と、100円ショップの鉢にミントを植え、「草花を勝手に持って行かないで！」とイラスト付きの札を設置した。
しかし、その後も被害は止まず、ある日には札が踏みつぶされ、鉢ごと盗まれる事態となった。
「努力が無駄になった」とAさんは落胆する。

■近隣でもミント増殖　思わぬ波及被害

さらに取材を進めると、近隣住民のBさん（30代、仮名）宅の庭でミントが異常繁殖していることが判明した。
Bさんは「突然庭のあちこちにミントが生え始め、除草剤も使えず毎日泣く泣く抜いている」と語る。
現場にはAさんのデコレーション鉢の破片が残されており、盗まれた鉢の行方と無関係ではないとみられる。

■背景に高まるガーデニング人気とモラル低下

園芸業界団体によると、コロナ禍以降、家庭でガーデニングを楽しむ人が増加傾向にある。
一方で、草花や鉢植えの盗難も全国的に散発しているという。
専門家は「植物は生き物であり、所有者の思い入れも強い。
軽犯罪として片付けず、地域全体でのモラル向上が重要」と指摘する。

■今後の対策と地域社会の役割

Aさんは「今後もガーデニングを続けたいが、安心して楽しめる環境が必要」と訴える。
警察関係者は「監視カメラの設置や近隣住民同士の情報共有が有効」とアドバイスする。
今後は地域ぐるみでの見守り体制構築が課題となりそうだ。

草花泥棒の被害防止には、個々の工夫に加え、地域社会全体の協力が不可欠だといえる。
社会全体でガーデニングの楽しさを守るための意識醸成が求められている。