「ごっくりどうぞ」から始まったモーニングの大混乱

「はいどうじょー！」―その大声と同時に、厨房のA君が滑って転び、大パニックが店内に広がった。
誰もが一瞬固まる中、私は忙しさのあまりツッコミたい気持ちをぐっと堪えるしかなかった。

その直前、私はA君に「注文入りましたー！」と勢いよく伝えていた。
するとA君も負けじと大声で「はいどうじょー！」と返事をした、その瞬間の出来事だった。

思えば、すべてはあの朝のモーニングタイムにさかのぼる。
開店早々、店内はてんてこ舞い。
4人の素敵なマダムたちにホットコーヒーを運び終えた私は、慌てて「ごゆっくりどうぞ」と言おうとした。
だが、口から飛び出したのはなぜか「ごっくりどうぞ」。
マダムたちが二度見し、私も一瞬固まったが、彼女たちは満面の笑顔で返してくれるという寛大さを見せてくれた。

実はあの朝、焦りと緊張で言葉がうまく出ず、予想外の一言が引き金となって、店全体が妙なテンションに包まれていたのだ。
「ごっくりどうぞ」という謎のフレーズから始まり、厨房では「はいどうじょー！」、そしてA君の転倒。
すべてが連鎖反応のように巻き起こった。

忙しいモーニング、誰もが必死だったが、今思い返せば、あの一連の珍事件のおかげで店には不思議な一体感が生まれていたのかもしれない。
「ごっくりどうぞ」―その言葉が、朝の喫茶店に小さな笑いの渦を巻き起こしたのだった。