○披露宴会場・メインテーブル前(夕方)
【登場人物】
新婦・美咲(28・繊細な雰囲気、純白のドレス)
新郎・健太(30・誠実そうな青年、タキシード姿)
新婦の父・和夫(58・頑固な中年、スーツ姿、酒気帯び)
新郎の母・明子(56・気丈、やや厳しめ)
司会者(35・穏やかな女性)
親族・友人たち(数名、着席)
(会場内、華やかなBGM。
シャンデリアが煌めく中、和やかな雰囲気)
SE:グラスが触れる音、談笑
○同・メインテーブル付近(続き)
(和夫、やや顔を赤らめて、グラスを片手に立ち上がる)
和夫:(苦笑しながら)
「俺の可愛い美咲を、健太くんがさらって行った…なんてな」
(会場、笑いと拍手。
美咲、はにかみながらうつむく)
SE:控えめな笑い声
(間)
和夫:(声が大きくなり、やや酒が回った口調)
「でもな、最初から怪しかったんだ、あいつは!」
(会場、ざわめき。
友人席の誰もが一瞬、息をのむ)
和夫:(怒りを抑えて、グラスをテーブルに置きながら)
「美咲は騙されてるんだ。
今はあいつに言い包められてるが…正気に戻った時のために、部屋はそのままにしてあるからな!」
(美咲、顔を伏せて震える。
健太、じっと和夫を見つめる)
SE:咳払い、空気がピリつく音
(新郎の母・明子、険しい表情で黙りこむ)
司会者:(戸惑いながら)
「あの…お父様の、美咲さんへの深い愛情が…」
(司会者、言葉に詰まる)
SE:沈黙
(美咲、涙をこらえて唇をかむ)
(間)
(健太、ゆっくりと立ち上がる。
会場、静寂)
健太:(まっすぐ和夫を見る。
声を震わせず、優しく)
「お義父さんが美咲さんを大切に育ててきたからこそ、僕のことが憎らしいんですよね。
」
(和夫、驚いたように健太を見る)
健太:(一歩前に出て、微笑んで)
「今日、僕は美咲さんをさらっていく泥棒です。
」
(会場、ざわめき)
健太:(涙をこらえて、しっかりと)
「一生返しません。
でも、一生大切にしますから。
」
(美咲、堪えていた涙があふれる)
SE:すすり泣く声
(和夫、ゆっくりと目を潤ませる)
和夫:(声を詰まらせて)
「…美咲、幸せになれよ。
」
(美咲、泣きながらうなずく)
(明子、険しい表情のまま遠くを見つめる)
(BGM:ゆっくりと切ないピアノ)
(会場内、拍手と涙)
N:あの日の披露宴。
誰が正しかったのか、誰にも分からなかった。
ただ、ひとつの家族が静かに生まれた瞬間だった――
(フェードアウト)
修羅場な話:父と娘と、ひとつの涙――披露宴、最後のテーブル
父と娘と、ひとつの涙――披露宴、最後のテーブル
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