○秋田・祖母の家(昼)
N:幼い夏、年に一度だけの帰省。
都会とは違う空気が、僕と兄をはしゃがせた。
SE:セミの鳴き声、風が草を揺らす音
○同・庭(昼)
(兄(10・やんちゃ)、僕(8・好奇心旺盛)が玄関を飛び出す)
兄:(笑いながら)「早く行こうぜ!」
僕:(元気に)「うん!」
(兄と僕、田んぼの周りを駆け回る)
○田んぼ道(昼)
(風が急に止み、重たい静寂が訪れる)
SE:風が止む音
僕:(額の汗をぬぐいながら、苦笑して)「なんか…急に、あったかい風になったね。
」
兄:(案山子の方をじっと見つめる)
僕:(兄の視線に気づき、近寄る)「あの案山子がどうかした?」
兄:(目を細めて、遠くを指差し)「いや…その向こう。
」
(僕も田んぼの奥を見つめる)
○田んぼ・奥(昼)
(白い、人ほどの大きさの物体が、くねくねと揺れる)
僕:(目を丸くして)「あれ、新しい案山子かな?風で…」
(風は止んでいるのに、白い物体は揺れ続ける)
兄:(顔がこわばる)
○祖母の家・縁側(昼)
(兄、慌てて家へ駆け込む。
僕は戸惑いながら追いかける)
○同・居間(昼)
(兄、双眼鏡を掴み取る)
兄:(興奮と不安の入り混じった声で)「俺が最初に見るから!ちょっと待ってろ!」
(兄、双眼鏡を構えて外を見る)
(間)
(兄の顔がみるみる青ざめ、手が震える)
SE:双眼鏡が床に落ちる音
僕:(おそるおそる、兄に近づく)「…何だったの?」
兄:(不自然に低い、別人のような声で)「わカらナいホうガいイ……」
(僕、凍りつく)
○田んぼ道(昼)
(僕、落ちた双眼鏡を拾えず、ただ遠くの白い物体を見つめる)
N:奇妙だった。
でも、なぜか恐怖は感じなかった。
○田んぼ・別の道(昼)
(祖父(60・厳格)が勢いよく駆け寄ってくる)
SE:足音
祖父:(息を切らして、叫ぶように)「あの白いモノを見てはならん!」
(僕、驚き、立ちすくむ)
(祖父、僕がまだ見ていないことに気づき、膝をつき、泣き崩れる)
祖父:(声を絞り出して)「ああ…よかった…」
○祖母の家・居間(夕方)
(兄が不気味に笑いながら、くねくねと不自然な動きを繰り返す)
SE:兄の笑い声が響く
(家族、兄を遠巻きに見つめる)
○祖母の家・玄関(帰る日・朝)
(母が荷造りをする横で、祖母(70・優しい)が僕の手を取る)
祖母:(涙をこらえて)「…兄は、ここに置いておいた方がいいよ。
」
僕:(必死で泣き叫ぶ)「やだ!一緒に帰る!」
○車内(出発・朝)
(田んぼが遠ざかる)
SE:車のエンジン音
(僕、涙でかすむ目を田んぼに向ける)
(兄が一瞬だけ手を振るように見える)
(僕、双眼鏡で兄を覗く)
(兄、静かに涙を流している)
僕:(心の声、震えながら)いつか…元に戻るよね…。
N:去りゆく田んぼを見晴らしていた、その時だった。
(間)
(視界の端に、あの「白いくねくね」が、こちらを見ていた)
SE:不穏な風の音
N:見てはいけないものを、間近で見てしまった。
(BGM:静かに不穏な旋律が流れはじめる)
『くねくね』
怖い話:見てはいけない夏 ― くねくねが揺れる田んぼで
見てはいけない夏 ― くねくねが揺れる田んぼで
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