「稽留流産後の夫婦が語る“病室の修羅場”　見えない悲しみと再生の記録」

【リード文】
ある夫婦が、結婚2年目に体験した稽留流産（けいりゅうりゅうざん）とその後の病室での出来事を語った。
小さな産婦人科医院で、出産を終えた家族と同室となったことで直面した“心の修羅場”とは何だったのか。
夫婦はなぜ苦しみを乗り越え、今どのような思いで過去を振り返るのか。
取材から見えた現代家族の喪失と再生の一端を報告する。

【大見出し】
稽留流産で子を失った夫婦——病室での“すれ違い”と再生への歩み

【中見出し】
流産手術後、産婦人科での現実

【小見出し】
同室の家族との会話がもたらしたもの

夫婦が稽留流産を経験したのは、約20年前のことだ。
結婚2年目で授かった第一子が、胎内で心拍を失い、医学的に「稽留流産」と診断された。
夫によれば、「胎児が母体に残っているため、『人工中絶手術』を受けるしかなかった」という。
当時、この呼称に違和感を抱いたものの、医学的な必要性から手術に同意したと語る。

手術後、妻はしばらく安静を要し、同じ病室で出産を終えた母子と共に過ごすことになった。
夫は「自分たちの表情は、まるでこの世の終わりのようだった」と振り返る。
一方、隣の家族は新たな命の誕生に沸き、夫が何度も「隣の赤ちゃんの方が可愛かった」と口にしたという。
夫は、「おそらく気遣いのつもりだったのだろうが、私たちには耐えがたい時間だった」と明かす。

【中見出し】
すれ違う感情、交錯する言葉

やがて看護師から退院許可が出ると、夫は妻に声をかけて病室を出ようとした。
すると、隣の夫が「帰るんですか？産後なのに入院しないんですか？」と問いかけてきた。
夫は冷静に「うちは途中でダメだったんです。
奥さんとお子さんを大事にしてください」と答え、その場を後にした。
当時の心情について「自分たちにとっては修羅場だったが、私たちが去った後、隣の夫婦も事実を知って動揺したかもしれない」と述懐する。

【中見出し】
喪失体験を経て、家族の再生へ

その後、夫婦は2人の子を授かり、いずれも健康に育っているという。
夫は「今振り返れば、あの時の経験が家族の絆を強くした」と語った。
同様の経験を持つ人へのメッセージとして、「喪失の苦しみは長く続くが、時間とともに癒されることもある」と述べている。

【締め】
専門家はどう見るか——流産経験者支援の課題

産婦人科医の佐藤美和氏は、「流産後の精神的ケアは非常に重要だ。
周囲の無意識な言動が、当事者をさらに傷つけることも多い」と指摘する。
今後は、医療現場での心理的サポート体制の充実が求められる。
流産という経験が家族や社会にどのような影響を与えるのか、引き続き取材を進めていきたい。