切ない話:悲しみと祝福が交錯した病室で――喪失と再生の物語

悲しみと祝福が交錯した病室で――喪失と再生の物語

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■【起】〜静かな病室、訪れた別れの予感〜
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かなり昔のことだ。
私たちは結婚して2年目、ようやく授かった赤ん坊を心待ちにしていた。
しかし、突然の稽留流産という現実が私たちを襲った。

赤ん坊はまだ母胎に留まっていたため、医学的には「人工中絶手術」という選択肢しかなかった。
その言葉にどうしても納得できなかったが、仕方なく手続きを進めるしかなかった。

手術を終えた妻はしばらく安静が必要で、私は小さな産婦人科の病室で彼女に付き添っていた。
同じ部屋には、出産を終えたばかりの母親とその家族がいた。

■【承】〜他人の喜び、心に刺さる言葉〜
───────

隣のベッドのご主人は、何度も「うちの子よりも、横に居た赤ちゃんの方が可愛かった」と繰り返していた。
おそらく、私たちの子を褒めるつもりだったのだろう。

だが、私たちの心は深い悲しみに沈んでいた。
隣の夫婦が喜びに満ちて語らうたび、「うるさい!頼むから黙ってくれ!」という思いが胸を締めつけた。

同じ空間で対照的な感情が交錯し、私たちはきっとこの世の終わりのような顔をして過ごしていた。

■【転】〜無自覚な問い、心をえぐる瞬間〜
───────

やがて看護士から帰宅の許可が下り、私は妻に「じゃ、帰ろうか」と声をかけた。
その瞬間、隣のご主人が驚いた様子で「え?帰るんですか?産後なのに入院しないんですか?」と尋ねてきた。

私は感情を押し殺し、冷静に「うちは途中でダメだったんです。
奥さんとお子さんを大事にして下さいね」とだけ伝えた。
そして、静かに病院を後にした。

隣の夫婦の祝福の時間は、私たちには修羅場だった。
しかし、今振り返れば、私たちが去った後に彼らが味わった衝撃もまた、別の修羅場だったかもしれない。

■【結】〜失った先に訪れた小さな光〜
───────

時が経ち、その後私たちは二人の子供に恵まれた。
どちらも健康に育ってくれている。

あの日の悲しみも、他人の言葉に傷ついたことも、今は静かな記憶となった。
喪失の先に新たな命が芽生え、私たちは静かに感謝の気持ちを抱いている。
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