義母による“家事指導”が家庭に及ぼす影響　引越しで距離を置いた夫婦の選択

■リード文
親世代と子世代の同居・近居をめぐるトラブルが後を絶たない。
2023年、首都圏在住のAさん（30代女性）は、義母による過剰な家事指導と差別的な言動に悩み、夫とともに引越しを決断した。
背景には何があったのか。
Aさんや関係者への取材から、現代家族が抱える問題の実態を探った。

■義母の“家事指導”が生む家庭内摩擦
Aさんによると、義母（以下、トメ）は長男の妻には寛容である一方、次男の妻であるAさんには「ダメ嫁」扱いをし、突如自宅を訪れては家事の粗探しや指導を始めていたという。
Aさんの夫もたびたび抗議したが、義母は「自分は間違っていない」と主張し、態度を改めなかった。

この状況を受け、Aさん夫妻は「心身の健康を守るため」（Aさん談）、黙って引越しを決意。
物理的な距離を置くことで、義母との接触を減らす対策をとった。

■義兄嫁の反応と“二重の溝”
引越し後、義兄の妻（義兄嫁）は「義母は善意でやっている」とAさんに説教し、義母を擁護した。
Aさんは「義兄嫁は義母からの干渉を経験していなかったため、私たちの苦労が理解されなかった」と振り返る。
Aさんは義兄嫁とも距離を置くことを選択した。

■義母の過干渉、義兄家族にも及ぶ
その後、義兄嫁が第一子を妊娠。
状況は一変した。
義母は連日のように義兄宅を訪問し、Aさんへの行動と同様に家事指導や育児への介入を開始。
赤ちゃんの性別や名前、将来の進路まで勝手に決め、女児と分かると「次は男の子」と出産を促す発言もあったという。

義母は出産への立ち会いも希望したが、病院側がこれを拒否。
その後も親戚や友人を連れて義兄宅に長居するなど、過干渉は続いた。

■家庭崩壊を防ぐための“距離”
Aさんは義兄宅を訪問した際、義兄嫁から長時間にわたり義母に関する愚痴を聞かされたと明かす。
「以前、私に『考えすぎ』と言っていた義兄嫁が、今度は自分が被害者になった」とAさんは振り返る。
しかし、義兄は母親と同調し、妻の悩みを「マタニティブルー程度」と軽視。
Aさんは義兄嫁から連絡先を求められたが、関わりを避けるため応じなかったという。

■専門家の見解と今後の展望
家族問題に詳しい心理カウンセラーの田村美紀氏は「親世代と子世代で価値観や距離感が異なり、過干渉がトラブルの原因となるケースは多い。
物理的な距離を置くことで、精神的な安定を取り戻す例も少なくない」と指摘する。

今後、Aさん夫妻のように家庭内のストレスから自衛する動きは増える可能性がある。
一方で、家族間のコミュニケーションのあり方や、適切な距離の取り方について、社会全体で議論が求められている。