不思議な話:君の右手は知っている〜ティッシュ箱の向こう側〜

君の右手は知っている〜ティッシュ箱の向こう側〜

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○自宅・リビング(夕方)

N:子供の頃、僕はよく一人で留守番をしていた。

SE:玄関のドアが閉まる音

○同・リビング(続き)

登場人物:ユウタ(10歳・好奇心旺盛な少年)

(テーブルの上でジュースを飲みながら、ぼんやり外を眺めている)

SE:コップが倒れる音

ユウタ:(驚いて)うわっ!

(慌ててティッシュを取り出し、こぼれたジュースを拭き始める)

ユウタ:(苦笑しながら)またやっちゃったよ…

(ティッシュを何枚も使い、ついに箱は空になる)

ユウタ:(空になった箱を手に取り、何気なく中を覗く)

(カメラ、ティッシュ箱の中をゆっくり覗き込むユウタの視点に切り替わる)

(箱の奥に、夜道が広がっている)

SE:風が吹き抜ける音

ユウタ:(声をひそめて)え…?なにこれ…

(指をそっと箱の中に差し入れる)

SE:風の音が強まる

ユウタ:(おそるおそる)ほんとに風…?

(表情が次第に好奇心に変わる)

ユウタ:(声を弾ませて)おもしろい…!

(ひとりで笑いながら指を動かす)

(突然、指先にぬるりとした感触)

ユウタ:(凍りつく)…っ!

SE:スライムが指にくっつく音

(慌てて指を引き抜き、見ると緑色のスライムがついている)

(スライムの中で、微かに目玉のようなものが動く)

ユウタ:(声を震わせて)な、なにこれ…!

(半泣きで洗面所へ駆け出す)

○自宅・洗面所(続き)

(必死でスライムを洗い流すユウタ)

SE:水道の音

ユウタ:(泣きそうな声で)落ちろ…落ちてよ…

(片手でスライムを握りつぶしながら、30分ほど格闘)

(やっとスライムが消え、ユウタは息を吐いて手を見る)

(右手には水ぶくれ)

ユウタ:(目を見開いて)…うそだろ…

○自宅・リビング(夜)

(両親が帰宅)

登場人物:母(40代・優しい)、父(40代・無口)

ユウタ:(必死に説明しながら)本当なんだって!ティッシュの箱の中が夜になってて…それで…!

母:(苦笑しながら)また変な夢でも見たんじゃないの?

父:(新聞をめくりながら)風邪でもひいたか?

(ユウタ、悔しそうに右手を見る)

○翌朝

(ユウタ、登校途中)

(家の近くの溝をふと見下ろすと、そこにあのスライムの欠片が)

ユウタ:(息をのむ)

(スライムは小さくなっているが、必死に進もうとしている)

(ユウタ、一瞬立ち止まる)

(間)

(意を決して、スライムを踏み潰す)

SE:ぬちゃっという音

(ユウタ、しばらくその場に立ち尽くす)

○回想・自室(夜)

(ユウタ、机に向かい、ノートに何かを書いている)

N:あれが、僕の唯一のオカルト体験だった。

ユウタ:(心の声)信じてもらえなくてもいい。
けど、もしかしたら——

(窓の外を見上げる)

N:僕は、地球を救ったのかもしれない。

(ユウタ、少しだけ誇らしげに微笑む)

(BGM:静かにフェードアウト)
読了
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