「無職かつ最低の人間なんだね。
」
息子にそう言い放たれ、僕は言葉を失った。
無職は関係ない、とかすれた声で反論したものの、息子はもうベッドに潜り込んでいた。
どうしてこんなことになったのか――少し前の会話を思い返す。
さかのぼること数分前。
「じゃあ、おでこの大きなホクロを『かっこ悪い』って理由で取ったお父さんは最低の人間なんだね。
」
息子は真顔で僕を見つめていた。
ホクロを取ることが、そんな重大な罪になるとは思いもしなかった。
僕は返す言葉もなく、ただ呆然としていた。
そのきっかけは、さらに数分前に遡る。
「へぇ、僕たち神様のホクロの中に住んでるの?」
「そうなんだ。
そして私たちのホクロも、それぞれが小さな宇宙なんだよ。
」
僕は得意げに宇宙論を語っていた。
息子は目を丸くしながら、自分の腕にあるホクロを見つめていた。
話の発端は、もっと前。
「ねぇお父さん、人間にはどうしてホクロってあるの?」
息子のこの一言だった。
僕は父親らしく、ちょっとユーモラスに答えたつもりだった。
「この宇宙は神様のホクロの1つにすぎないんだ。
神様の体にはたくさんの宇宙がある。
僕たちのホクロもまた、小さな宇宙なんだよ。
」
息子は興味津々で、「知らない間にホクロが増えることがあるだろう?あれはいわゆるビッグ・バンなんだよ」と僕が説明すると、ますます目を輝かせていた。
しかし、いま思えば――
僕がかっこ悪いからといってホクロを取ったこと、その行為が「宇宙を消す」ことだと息子は受け取ったらしい。
無邪気な質問が、思いもよらぬ審判となって返ってきた夜。
親子の会話は、ときに宇宙より深いブラックホールに落ちていくのかもしれない。
笑える話:「最低の人間」と呼ばれた夜、その理由はホクロの宇宙だった
「最低の人間」と呼ばれた夜、その理由はホクロの宇宙だった
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