山からの帰り道、感じた異変

これは私の取り返しのつかない後悔の物語です。

大学生の頃、私はAという彼女と付き合っていました。
当時は暇な時間があり、彼女と買い物や映画を楽しんでいました。

ある日、Aが「近くの山へハイキングに行こうよ」と提案しました。
私も時間を持て余していたので、断る理由もありません。
調べると、その山は電車で行ける距離にありました。
Aは初心者向きで穴場的だと楽しそうです。

当日、雨具を持つか悩みましたが、晴れ予報だったので軽装で出発。
山は整備されていて、初心者の私でも登りやすかったです。
Aは「あの岩、人の顔に見えるね」とはしゃぎ、私も楽しい気分になりました。
自然を満喫しつつ、他に人もいない絶好の日でした。

しばらく進むとお堂がありました。
Aが裏道を見つけ、「行ってみよう」と言いました。
「立ち入り禁止」の看板があったのですが、その時は何も考えず進んでしまいました。

険しい道を10分ほど進むと滝があり、そこでおにぎりを食べていました。
すると雨が降り出し、急いで大木の下で雨宿り。
しかし止む気配がなく、Aが指さす洞穴に駆け込みました。

「雨、止まないねぇ」と話していると、Aが私の手を握り、その潤んだ瞳に引き寄せられ、唇を重ねました。
抑えきれず、欲望のまま時を過ごしました。

ふと気づくと雨は止み、私たちは無事下山しました。

翌日、ファミレスで食事をし、その後は私の部屋に泊まる予定でした。
彼女が泊まると当然そういった行為になるのですが、異常が起きました。

Aといる最中、強烈な視線を感じ、「誰かに見られてないか？」と不安になりました。
Aは部屋を調べましたが異常はなく、その夜、夢を見ました。

私は誰かの視点で山にいて、屈強な男たちが何かを伺っていました。
山道に男女4人が通ると、男たちは飛び出し、男性を何かで滅多打ちに。
動かなくなった男性を見て、女性を乱暴し始めました。
泣き叫ぶ女性の姿に耐えられず、目が覚めました。

それ以降、Aとの行為ができなくなりました。
異変を感じるのは私だけで、動悸で意識を失ったり、白い手がベッドの下から現れたりしました。
Aとの関係を楽しめなくなり、大学卒業と同時に別れました。
「詳しい人に相談した方が良いんじゃない？」とAは言いましたが、どうすれば良いか分からずにいました。

Aと別れてから他の女性とも付き合いましたが、行為をしようとすると異変が起き、進めません。
今では女性と無縁の人生を送っています。

時が流れ、あの山を再訪しました。
解決するとは思いませんでしたが、何か進展があるかと。
偶然、お堂付近で作業していた老人に話を聞けました。

「このお堂？昔、山賊がいて酷いことをしていたらしい。
結局退治されたけど、犠牲者の魂を鎮めるために建てたって話だね。
噂だけどね。
」

私は犠牲者から祟られたのでしょうか。
そんな場所だとは知らずに罰を受けるのは理不尽です。
Aの言う通り、詳しい人に相談すべきでしょうが、解決できる保障はありません。
それに、山での行為が祟られた原因と言われたら、逆に説教されそうです。

「後悔先に立たず」あの時、何も考えずに行動した自分に言い聞かせたいです。