○空き地・秘密基地(夕方)
(夕焼けに染まる空き地。
段ボールや板材で作られた幼い子供たちの秘密基地。
ランドセルを放り投げ、3人の少年が集まっている)
登場人物:
タロウ(10歳・好奇心旺盛な小学4年生)
ケンジ(10歳・少し勝気な少年。
通称けんちゃん)
トシオ(10歳・おっとりした少年。
通称としちゃん)
N:僕たちが小学4年生だった、あの夏の話だ。
ケンジ:(元気に)
「よし、今日も秘密基地で遊ぼうぜ!」
トシオ:(ランドセルを下ろしながら)
「うん、昨日の続きやろうよ。
」
(タロウ、うれしそうに基地の中へ駆け込む)
○同・秘密基地(続き)
(3人、ガラクタやおもちゃを広げて無邪気に遊ぶ。
ふと、基地の入り口に人影が現れる)
登場人物:
アブタ(10歳・ぽっちゃりした少年。
通称アブちゃん。
両手にガンプラを抱えている)
アブタ:(控えめに)
「あの…ぼくも混ぜてくれへん?」
(ケンジとトシオ、タロウを見る。
ガンプラに目が釘付けになる)
タロウ:(目を輝かせて)
「それ、ガンプラやん!すげぇ!」
ケンジ:(無邪気に)
「アブちゃん、ええやん、一緒に遊ぼ!」
(アブタ、ほっとしたように微笑み、ガンプラを差し出す)
○同・秘密基地(夕暮れ)
(みんなでガンプラを並べて遊ぶ。
だが次第に、取り合いになっていく)
トシオ:(困った顔で)
「ちょ、ちょっと…それ、僕のやん…」
ケンジ:(強引に)
「いや、さっきから俺がやってたやつや!」
アブタ:(声を上ずらせて)
「アッガイ返してよ!」
タロウ:(意地になって、ガンプラを離さない)
「だって、さっき貸してくれるって…!」
(ガンプラを引っ張り合う3人)
アブタ:(苦しそうに、小さな声で)
「いややぁ…」
(SE:耳鳴りのような高い音「キーン」)
(突然、空気がピリッと変わる。
タロウたちが驚いた表情で止まる)
(アブタの身体がふわりと宙に浮かび上がる)
N:(声を潜めて)
その瞬間、僕たちは金縛りにあったみたいに、ただ見つめるしかなかった。
(カメラ、アブタの浮遊を下からあおる)
アブタ:(無表情で、ゆっくりと基地中央の街灯ポールへ向かう)
(アブタ、アッガイのガンプラをポールの上にそっと置く)
(アブタ、ゆっくりと地面に降り立つと、背を向けて走り去る)
(残された3人、呆然としたまま動けない)
(長い沈黙)
ケンジ:(小声で)
「…な、なんやったんや、今の…?」
トシオ:(震えながら、ランドセルを手に取る)
「帰ろ…」
(3人、顔を合わせずにそれぞれ無言でランドセルを持ち、駆け足で家路につく)
(BGM:不安げな旋律が静かに流れ始める)
○翌朝・教室(朝)
(教室内、生徒たちのざわめき)
トシオ:(窓の外を見つめて、ぽつりと)
「…アブちゃん、今日は学校休みなんやな…」
ケンジ:(机に肘をついて)
「昨日のこと、誰にも言うなよ…絶対やぞ…」
タロウ:(不安げにうなずく)
○数日後・秘密基地(昼)
(3人、再び基地に集まり、それぞれ持ち寄ったおもちゃを無言で回収する)
N:アブちゃんは、そのまま引っ越してしまった。
(トシオ、街灯に近づく)
トシオ:(小さな声で、つぶやく)
「夢やったんやよな…」
(トシオ、軽く街灯を蹴る)
(SE:カラン、と何かが落ちる音)
(3人、驚いて振り返る)
(アッガイのガンプラが地面に転がる。
左腕が溶けたようにぐにゃりと歪んでいる)
タロウ:(息を呑んで)(心の声)
まるでチョコレートみたいや…なんで…?
(3人、言葉を失い、ただその場に立ち尽くす)
N:それ以来、ガンダムのモビルスーツが、僕には少し怖い存在になった。
(カメラ、ゆっくり空にズームアウト。
夕焼けに染まる秘密基地)
(BGM:切なく静かな余韻の音楽)
(フェードアウト)
怖い話:浮遊するアッガイと、僕らの秘密基地〜あの日の夏、消えた友達〜
浮遊するアッガイと、僕らの秘密基地〜あの日の夏、消えた友達〜
🎭 ドラマ に変換して表示中
読了
スワイプして関連記事へ
0%
記事要約(300文字)
ダミー1にテキストを変換しています...
0%
変換中
コメント