■【起】〜放課後の秘密基地と新しい仲間〜
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僕が小学4年生だった頃の話です。
放課後になると、友達のけんちゃん、としちゃんと一緒に、手作りの秘密基地で遊ぶのが日課でした。
学校帰り、わくわくしながらその場所に集まり、それぞれのおもちゃを持ち寄って、誰にも邪魔されない特別な時間を過ごしていました。
ある日、いつものように遊んでいると、同じクラスのアブちゃんが「まぜて」と声をかけてきました。
両手いっぱいにガンプラを抱えた彼の姿に、僕たちは思わず目を輝かせました。
「それで遊べる」という単純な理由で、アブちゃんを新しい仲間に迎えることにしたのです。
■【承】〜ガンプラ争奪戦と微妙な空気〜
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秘密基地にガンプラが加わり、遊びはますます盛り上がりました。
しかし、しばらくすると、アブちゃんの持ってきたガンプラの取り合いが始まってしまいます。
中でも「アッガイ」をめぐって、僕とアブちゃんの間で小さな争いが起きました。
アブちゃんは「アッガイを返して」と言い、僕も意地になって譲りません。
仲間に加わったはずのアブちゃんとの間に、どこかぎこちない空気が流れ始めます。
友情と独占欲が混じり合い、子どもながらに少しだけ居心地の悪さを覚えていました。
■【転】〜「いややぁ」の叫びと異変の夜〜
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その時、アブちゃんが大きな声で「いややぁ」と叫びました。
次の瞬間、僕の耳はキーンとなり、世界が静まり返ったような感覚に襲われました。
気がつくと、アブちゃんが僕の目の前でふわふわと浮かび上がっていたのです。
驚きのあまり、誰も動くことができませんでした。
秘密基地の真ん中に立つ街灯のポール、その上にアブちゃんはアッガイをそっと置き、地面に降り立つと、何も言わずにどこかへ走り去っていきました。
僕たちは顔を見合わせることもせず、ランドセルを持って無言で家に帰りました。
翌日、アブちゃんは学校に現れず、そのまま引っ越してしまったのです。
■【結】〜溶けたアッガイと残る怖さ〜
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その日以来、僕たちは秘密基地に行かないことに決め、各自おもちゃを回収しに向かいました。
帰り際、としちゃんがふと「夢やったんやよな」とつぶやき、街灯のポールを蹴って揺らしました。
すると、としちゃんの背後にアッガイが落ちてきました。
その左腕はまるでチョコレートのように溶けていました。
現実と夢の境界が曖昧なまま、胸の奥に不思議な怖さだけが残りました。
それからというもの、ガンダム系のモビルスーツは今でも少し怖い存在のままです。
怖い話:秘密基地と浮かぶ友だち――少年時代に残されたガンプラの記憶
秘密基地と浮かぶ友だち――少年時代に残されたガンプラの記憶
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