不思議な話:立ち飲み屋で始まる奇妙な縁と、見えない世界のバイト物語

立ち飲み屋で始まる奇妙な縁と、見えない世界のバイト物語

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■【起】〜偶然の出会いと叫び声の夜〜
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僕には、御祓いを仕事にしている知り合いがいる。
そんなふうに言うと大げさだが、実際は最寄り駅近くの立ち飲み屋で出会ったおばさんだ。

今から7年前。
引っ越したばかりで友達もいなかった僕は、気軽に入れる立ち飲み屋に通っていた。
そんなある日、初めて会ったそのおばさんは、僕を見るなり「ギャーッ」と叫んだ。
実は僕、何度か見知らぬ人に叫ばれた経験がある。
だから「ああ、またか」と無視していたのだけれど、彼女は他の人とは違い、矢継ぎ早に話しかけてきた。

「どこから来たの?仕事は?両親は?」。
尋問のような質問攻めに、ちょっと面倒だが、こんなおばさんの友達も悪くないかもと答えることにした。

数日後、彼女は「今度、私の店に来て!」とカードを渡してきた。
興味もなかったし、なぜか上から目線に感じてムカついたので、そのカードは捨ててしまった。

■【承】〜怪しい誘いと、御祓いチームの正体〜
───────

しかし、その後また立ち飲み屋で彼女に出会い、逃げる間もなく、彼女の店へと連れて行かれる羽目になった。
痩せたおじさんと若い女性も一緒で、逃げ場はなかった。

彼女の名前はトキコさん、若い女性はケイちゃん、おじさんはヤスオさんというらしい。
僕は「絶対、宗教の勧誘だろう」と警戒しながら3人の後をついていった。
店に着くまで誰も喋らないので、ケイちゃんに話しかけたら「ヒィー!」と驚かれ、ヤスオさんには「君が怖いんだ」と言われて、ちょっと傷ついた。

着いた先はただの占いの館だった。
宗教の勧誘ではなさそうで、むしろ「占いでもしてくれるのかな」と期待した。
けれどトキコさんは「一緒に仕事しない?」と誘ってきた。
御祓いを生業にしている3人は、僕にも協力してほしいと言う。

当時会社勤めだった僕は「仕事があるので無理です」と断ったが、「土日のバイトだと思って」と食い下がられた。
幽霊も神様も信じていなかったけれど、まぁいいかと承諾した。

■【転】〜見えない異変と、僕の中の“何か”〜
───────

翌週末、○○区の一軒家に呼ばれた。
自転車で向かおうとしたら「徒歩で来い、アホ」とトキコさんに怒られ、しぶしぶ自転車を停めて現地に向かった。

家に入ると、トキコさんとケイちゃんが「ああ、いますね」とつぶやいたが、僕には何も見えなかった。
居間には中年夫婦がいて、お茶を出してくれる。
トキコさんに案内され、2階の「タカオ」と書かれた部屋へ。
トキコさんから「何があっても取り乱すな」と注意を受けて、扉を開けると、中学生くらいの少年がトキコさんに飛びかかった。

「ガジャガジャ!」と叫ぶ少年。
僕が近づくと震え始め、ベッドの隅に逃げていく。
トキコさんは「体のどこでもいいから叩け!」と指示。
言われるまま背中を叩くと、タカオ君は泡を吹いて倒れた。

どうやら、半年ぶりに落ち着いて寝たらしい。
帰り道、トキコさんに「意味が分からない」と聞くと、ケイちゃんは途中でゲロを吐いた。
「あんたは相当なモノを持ってるね」と言われ、初めは何のことかと思ったが、どうやら『守護霊』や『気』のことらしい。
「良いんですか?」と聞くと、「いや、最悪なんだ」と返される。
普通なら生きているのが不思議なんだとか。

■【結】〜見えぬ世界の中で、続く奇妙な日常〜
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その後、トキコさんの店で10万円を受け取った。
『中学生の背中を叩いて10万円ならいいか』と割り切った僕。
その後、留学を経て3年前に戻ってきた。

トキコさんは「それ、逞しくなってるよ」と言い、今も変わらず御祓いバイトは続いている。
見えないものは結局見えないままだ。
ケイちゃんは今でも仕事の後にゲロを吐く。
僕のせいなので、ちょっと申し訳ない。

奇妙な縁と、見えない世界のバイトの日々は、今も静かに続いている。
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