「そんなこと、あったっけ?」
Kさんは笑ってそう言った。
場所は、KさんとTさんの結婚式の二次会。
数年ぶりに顔を合わせた私たちにとって、その話題は思いがけないサプライズとなった――。
実は、KさんとTさんは当時から付き合っていたのだそうだ。
今では誰もが知る仲良し夫婦だが、あの日の“事件”は、まだ誰も二人の関係に気付いていなかった頃のこと。
話は数年前、私がまだ新人だった頃に遡る。
あの日、Tさんと私はいつものように帰ろうとしていた。
ふとそこへ、三年先輩のTさんが持っていたキックボードに、ベテラン社員のKさんが興味を示した。
「俺、これ乗ったことないんだよな」
Kさんの一言に、Tさんは冗談めかして「じゃあ、乗ってみます?ここで」と答えた。
まさか本気にするとは思わなかった。
しかしKさんはキックボードを手に取ると、そのままオフィス内を滑走し始めたのだ。
突然の出来事に、Tさんは呆然。
私も驚きで言葉を失った。
S部長は口をあんぐりと開けてKさんを見つめていた。
オフィスの狭い通路を颯爽と駆け抜けたKさんは、何事もなかったかのようにキックボードをTさんに返し、自分のデスクへと戻っていった。
あのときの奇妙な空気も、今となっては微笑ましい思い出だ。
――残業続きで疲れていたのか、それとも、Tさんへのさりげないアピールだったのか。
すべての始まりは、一本のキックボード、そして“誰も知らなかった恋”だった。
仕事・学校の話:結婚式二次会で明かされた、あの日のキックボード事件
結婚式二次会で明かされた、あの日のキックボード事件
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