○団地・外観(夜)
SE:遠くで雷鳴。
雨音が静かに響く。
N:20年前――まだ私が団地に住んでいた頃の出来事だ。
○団地・エントランス前(夜)
(雨の中、仕事帰りのタカシ(35・会社員)は、傘をさして歩いている。
ふと、公園に目をやる。
)
(公園の街灯の下、ヨウスケ(17・痩せ型の少年)が、傘もささずに立ち尽くしている。
彼は無表情で、向かいの団地をじっと見つめている。
)
タカシ:(立ち止まり、眉をひそめる)
(心の声)なんだ…あの子は…。
(タカシ、しばらくその場から動けず、ヨウスケを見つめている。
落ち着かない様子。
)
○タカシの自宅・リビング(夜)
(タカシ、コートを脱ぎ、カーテンの隙間から窓の外を覗く。
)
SE:雨の音が強まる
(ヨウスケはまだ同じ場所に立っている。
)
タカシ:(不安そうに)(心の声)
まだ、いるのか…。
(時計を見ると20時を過ぎている。
タカシはため息をつき、ベッドに倒れこむ。
)
○タカシの自宅・寝室(夜)
SE:雨音の中、静かな寝息。
(画面暗転)
○タカシの自宅・リビング(翌朝)
(カーテンを開け、外を確認するタカシ。
驚愕する。
)
タカシ:(目を見開く)
まさか…まだ…。
(ヨウスケは、夜と同じ場所で、びしょ濡れのまま立ち尽くしている。
)
○団地・公園前(朝)
(タカシ、傘を持って駆け寄る。
)
タカシ:(息を切らせて)(傘を差し出しながら)
大丈夫か?どうしたんだ、君…?
ヨウスケ:(濡れた髪を揺らし、静かに微笑む)
ヨウスケ:「…ありがとうございます。
」
(それ以上、何も語らない。
タカシは困惑しながらも、黙って傘を差し出す。
)
○団地・公園(昼)
(ヨウスケは傘の下、変わらず立ち続けている。
タカシは遠くから彼を見守る。
)
N:昼になっても、彼は動かなかった。
その背に、どうしようもない悲しみが滲んでいた。
○タカシの自宅・リビング(昼)
(タカシ、スマホを手に取り、向かいの団地に住む知人・ミサコ(40・穏やかな女性)に電話をかける。
)
タカシ:(不安そうに)
ミサコさん、あの…公園に立ってる子、心当たりないかな?
ミサコ:(電話越し、沈んだ声で)
ミサコ:「ああ…彼、娘の…彼氏だった子よ。
」
(間)
ミサコ:「先月、うちの娘が…16歳で急性白血病で亡くなったの。
彼、最期までずっとそばにいてくれて…。
」
タカシ:(言葉を失う)(目を伏せて)
ミサコ:「あの日から、彼は時々、あそこで立ってるの。
」
(電話が切れる)
(BGM:切ない曲調に変わる)
○団地・公園(夕方)
(ヨウスケは、依然として雨の中で立っている。
タカシは遠くから見つめ、涙をこらえている。
)
N:彼は悲しみの中、雨に打たれながら、彼女の面影を探していたのだろう。
16歳で恋人を失った痛みは、言葉にできないほど重い。
○団地・公園(夜)
(ヨウスケの背中が、ゆっくりと雨に溶けていく。
タカシは静かにその姿を見守る。
)
(カメラ、ゆっくりズームイン)
N:あの日、雨の中に立ち尽くす彼の姿は、今も私の記憶に焼き付いている。
悲しみと強さ――あの青年の背中は、誰よりも美しかった。
(BGM:フェードアウト)
切ない話:雨の公園に立つ少年と、忘れられない夜
雨の公園に立つ少年と、忘れられない夜
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