涙が止まらなかった、あの瞬間。
向かいの団地の知人から「彼は亡くなった娘の彼氏なんだ」と知らされたとき、私はただただ胸が締め付けられました。
16歳で最愛の人を亡くした彼が、冷たい雨の中で何もできずに佇んでいた理由。
そのすべてを知った今でも、あの日の彼の姿は鮮明に焼き付いています。
しかし、その衝撃の事実を知る少し前、私は彼のもとへ傘を差し出していました。
昼になってもなお動かず立ち続ける彼の限界を感じ、どうしても放っておけなかったのです。
「大丈夫?どうしたの?」と声をかけると、「ありがとうございます」とだけ返してくれましたが、それ以上は何も話そうとしませんでした。
それからも、彼はさらに6時間、同じ場所に立ち尽くしていたのです。
―時を戻して、あの日の朝。
窓から外を見ると、昨晩からずっと同じ場所にいる彼の姿が目に入ります。
雨は止む気配もなく、季節外れの寒さがあたりを包んでいました。
夜8時、会社から帰宅する途中で見かけたときから、彼は傘もささずに公園に立ち、向かいの団地をじっと見つめていました。
その姿はどこか不気味で、私の心はざわつきました。
すべての始まりは、20年前のある夜。
当時、私は団地で暮らしていました。
仕事帰り、ふと公園に不自然な気配を感じて足を止めると、少年がひとり雨の中に立っていたのです。
帰宅してもそのことが気になり、1時間後に窓から覗くと、まだ彼はそこにいました。
しかし、疲れからその晩は早く寝てしまい、何もできませんでした。
そして、あの結末へ。
彼はひたすら雨に打たれて立ち尽くし、ただ彼女の住んでいた団地を見つめていたのです。
亡くなった恋人への想いが、彼をあそこに縛り付けていたのだと知った私は、彼の哀しみと強さに心を打たれました。
20年経った今でも、あの日の彼の後ろ姿は、私の中で「青春の痛み」として輝き続けています。
切ない話:雨の中に立ち尽くす少年の理由――涙の結末から始まる20年前の記憶
雨の中に立ち尽くす少年の理由――涙の結末から始まる20年前の記憶
🔄 オチから に変換して表示中
読了
スワイプして関連記事へ
0%
記事要約(300文字)
ダミー1にテキストを変換しています...
0%
変換中
コメント