○自宅・ダイニング(夕方)
(窓の外、裏山が赤く染まる。
テーブルには夕食の支度。
中学生のユウタ(14・素朴な雰囲気)が、祖父(70・無口で優しい)と並んで座っている。
母(40代)は台所で皿を洗っている)
N:あの日のことは、今も家族の間で語ることはない。
N:だけど、あの時の空気だけは、今も胸に残っている。
○回想・裏山(昼)
(ユウタ(小学生時代・10歳)が祖父と山を歩く。
秋の木漏れ日が差し込む)
祖父:(優しく)
「ここらへんに、いいのが生えるんだ。
見てみな。
」
(ユウタ、目を輝かせてうなずく)
N:小学生の頃、じいちゃんとよくキノコ採りに行った。
山は、家族みたいな場所だった。
○裏山・山道(現在・昼)
(ユウタ(14)と友人のアキラ(14・明るい性格)が、バスケットを持って歩く。
袋にはキノコ。
足元の落ち葉を踏みしめる)
アキラ:(笑顔で)
「今日、けっこう採れたな。
」
ユウタ:(うなずきながら)
「そろそろ戻るか。
親父、また早く帰れってうるさいし。
」
(ふと、アキラが立ち止まり、顔が青ざめる)
アキラ:(突然、叫ぶ)
「うわっ!!」
(その場に座り込む。
ユウタ、慌てて駆け寄る)
ユウタ:(心配そうに)
「どうした?ケガしたのか?」
(アキラ、無言で上を指さす)
(ユウタ、ゆっくりと上を見上げる。
太い枝から、2体の“人影”がぶら下がっている)
SE:風が木々を揺らす音
(ユウタ、顔が強張り、息を呑む)
(カメラ、二人の顔、そしてマネキンの足元へゆっくりズームイン)
(間)
ユウタ:(かすれ声で)
「…これ、まさか…」
(視線がマネキンの顔へ。
よく見ると不自然なプラスチックの肌。
マネキンだと気づく)
ユウタ:(呆然と)
「…ふざけんなよ、誰だよ、こんなイタズラ…」
(アキラ、震える手で自分の膝を握る)
○自宅・玄関(夕方)
(ユウタとアキラが泥だらけのまま駆け込む。
父(45・厳格だが情に厚い)が出迎える)
父:(驚いて)
「おい、どうした?その顔…」
ユウタ:(息を切らせて)
「山で…首吊りの…いや、マネキンが二つ…!」
(アキラ、言葉を失って俯く)
父:(一瞬沈黙、低い声で)
「……よし。
俺が行く。
」
(父、脚立・手斧・枝切りバサミを用意する)
○裏山・現場(夕暮れ)
(父が脚立に上り、ユウタとアキラが脚立を必死で支える。
枝に吊るされたマネキンを見上げる三人)
SE:ロープが切れる音
(父、手際よくロープを切りマネキンを地面に落とす)
父:(怒りを抑えて)
「こんなもん、さっさと片付けるぞ。
」
(ユウタとアキラ、無言でうなずく)
○自宅・納屋(夜)
(納屋に運び込まれたマネキン。
三人で作業。
父が衣服を剥がす)
SE:布を引き裂く音
(ユウタ、ふとマネキンの腹部に赤い文字があるのに気づく)
ユウタ:(ぎょっとして)
「…ちょっと待って、これ…」
(父とアキラも覗き込む。
そこには大きな赤文字)
(カメラ、マネキンの腹部“このマネキンを下ろした人間は死ぬ”)
(アキラ、顔が蒼白になる)
(父、もう一体の服を剥がす。
もう一つの赤い文字)
(カメラ、アップ“このマネキンを下ろした人間の、最も愛する者が死ぬ”)
(全員、凍りつく)
(長い沈黙)
父:(声を震わせずに、努めて明るく)
「よし、ジュースでも買ってこい。
お前ら、ちょっと外で待ってろ。
」
(ユウタとアキラ、戸惑いながら外へ出る)
○納屋前(夜)
(ユウタとアキラ、互いに顔を見合わせる。
遠くで父が納屋の中で何かを壊す音)
SE:プラスチックが砕ける音
(BGM:静かに切なさが流れ始める)
アキラ:(小声で)
「…俺たち、変なことしちゃったのかな…」
ユウタ:(俯いて、かすれ声で)
「わからない。
でも、もう忘れよう。
」
○自宅・リビング(夜)
(父が帰ってきて、何もなかったように食卓につく。
母は微笑んでいる。
ユウタとアキラ、無言のまま座る)
(長い沈黙)
N:その夜から、俺たち家族は、山のマネキンの話をしなくなった。
N:「最も愛する者が死ぬ」――その言葉だけが、今も心の中に残っている。
(カメラ、家族の食卓を静かに引きで映す)
(フェードアウト)
怖い話:山奥のマネキンと、語られない家族の記憶
山奥のマネキンと、語られない家族の記憶
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