不思議な話:廃道の記憶――誰も知らない山の向こうで見たもの

廃道の記憶――誰も知らない山の向こうで見たもの

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○大学・駐車場(夕方)

N:20年前のあの日、俺たちはまだ何者でもなかった。

(夕闇が降り始める駐車場、三人の青年が車のそばに集まっている)

登場人物:
・オレ(22歳・やや無気力な大学生)
・K(22歳・無鉄砲な性格、ジムニーの持ち主)
・S(22歳・冷静で皮肉屋)

K:(小声で、ワクワクした表情)
「なあ、今日さ、新しい廃道見つけたんだ。
行ってみない?」

S:(苦笑しながら)
「また廃道かよ。
前にイノシシに追いかけられたの、忘れてないからな。


オレ:(肩をすくめて)
「まあ、暇だし。
どうせ他にやることもないしな。


(Kのジムニーに乗り込む三人)

SE:エンジンがかかる音

○山道・車内(夕方)

(車が細い道を進む。
窓の外には鬱蒼とした森)

K:(前を見ながら)
「ここから入るぞ。


(車が舗装路から外れ、荒れた道に入る)

S:(窓の外を見つめる)
「誰も通ってないな。
草ぼうぼうだ。


オレ:(ふと不安げに)
「……何か出そうだな。


(車が100mほど進み、行き止まり)

K:(指差して)
「あそこ、金網あるけど、針金だけだ。
ニッパ持ってるし。


(Kが車を降りて金網を切る)

SE:金属が切れる音

(オレとSも降りて、三人で道の奥へ)

○廃道・トンネル前(夕方)

N:(心の声)
悪いことをしてる気はなかった。
ただ、先が見たかった。

(トンネルの中は薄暗く、湿気が漂う)

S:(足早に進みながら)
「意外と道、キレイじゃん。


K:(笑いながら)
「これ、何年も使われてないよな。


(トンネルを抜けて、三人が出口で一瞬立ち止まる)

○トンネル出口・鳥居前(夕暮れ)

SE:風が吹き抜ける音

(出口のすぐ前に、赤い鳥居)

S:(驚いて、指さす)
「おい、あれ見ろ!」

オレ:(息を呑んで)
「……鳥居?」

K:(少し怯えながら)
「なんでこんなとこに……」

(間。
三人、目を合わせる)

オレ:(決意して)
「とりあえず、もう少しだけ行ってみよう。


○廃道・進行中(薄暗くなり始める)

(道が舗装から土に変わる。
しんとした空気)

(小さな祠がぽつんと置かれている)

S:(不安げに)
「……さっきから、空気、変じゃないか?」

K:(強がって)
「ビビりすぎだって。


(オレは祠をじっと見つめ、手を合わせる)

○廃道・広い平野(夕暮れ)

(道の先に、広大な景色が広がる。
遠くに大きな茅葺きの建物)

(BGM:静かに壮大な曲調に変わる)

オレ:(驚き混じりに)
「……ここ、どこだ?」

K:(目を見開いて)
「すげぇ……何だあの建物。


(車を停めて三人、外に降り立つ)

○茅葺きの建物・前(黄昏)

(空は澄み渡り、空気が透き通る)

S:(感動しながら、だが不安も混じる)
「……誰もいないのか?」

オレ:(建物を見上げて)
「でかいな……中、見てみる?」

(Kが先に歩き出す。
三人で建物の中へ)

○茅葺きの建物・内部(薄暗い)

(広い空間。
異様なまでに太い柱。
柱には御札――そして、人間の耳)

SE:心臓の鼓動音が高まる

オレ:(息を詰めて、声を震わせて)
「これ……本物なのか?」

K:(青ざめて、後ずさる)
「やばい、やばい、やばい!」

(オレとK、慌てて外へ飛び出す)

○建物裏手(夕闇)

(Sの姿を探して駆ける。
裏に無数の蝋燭が並ぶ異様な光景)

SE:蝋燭の炎が揺れる音

S:(蒼白な顔で)
「……太陽、どこにある?」

(オレ、空を見上げて凍りつく)

N:そのとき、俺たちは初めて、現実から外れてしまったことを悟った。

K:(喉を詰まらせて)
「帰ろう! 今すぐ!」

○廃道・車内(帰路・夜)

(車が急発進し、荒れた道を戻る)

SE:タイヤが地面を滑る音

S:(バックミラーを見ながら)
「……誰か、ついてきてないよな?」

オレ:(手が震える)
「大丈夫、もうすぐ国道だ……!」

○国道・分岐点(夜)

(太陽が沈みかけている。
三人、無言でほっと息をつく)

N:俺たちに異変は起きなかった。
ただ、あの日の風景は、今も脳裏に焼きついている。

○廃道・入り口(後日・昼)

(頑丈な門で廃道が封鎖されている)

N:もう二度と、あの道に入るつもりはない。

(カメラ、ゆっくりと廃道の奥へズームイン――)

(フェードアウト)
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