あの巨大な茅葺きの建物の中で、俺は異常に太い柱に御札と、干からびた人間の耳が無数に打ち付けられているのを見てしまった。
恐怖で身体が動かず、Kと顔を見合わせたまま、慌てて外に飛び出した。
建物の裏に回ると、無数の蝋燭が一斉に揺れていて、Sが「太陽ってどこに出てるんだ?」と震える声で呟く。
太陽の位置が明らかにおかしい――ここは何か普通じゃない場所だった。
その直前、俺たちは車を降りて、見渡す限りの平野と澄み渡る空に圧倒されていた。
道の先に現れた黒く巨大な茅葺き屋根の建物。
その異様な大きさに惹かれ、俺たちは吸い寄せられるように中を覗いたのだ。
祠や鳥居、土の道――すべてが現実離れしていたが、好奇心が恐怖を上回っていた。
さらにさかのぼると、トンネルを抜けた瞬間、出口に鳥居が建っていたのをSが見つけていた。
俺たちは「変だな」と思いつつも、引き返す気にはなれず、そのまま進んでしまった。
舗装は土に変わり、道は荒れているはずなのにどこまでも続いている。
廃道探索という軽い冒険心が、いつの間にか異界への入り口を踏み越えていたのだ。
そもそもの始まりは、大学生のころ、俺とKとSが目標もなく、暇つぶしのために廃道探索を始めたことだった。
Kのジムニーで行ける範囲の廃道を巡っていたが、ある日Kが「新しい廃道を見つけた」と言い出した。
大学から車で30分の山道、土砂崩れ防止の金網をニッパで切って進入した時点で、すでに俺たちは戻れない道に踏み込んでいた。
結局、俺たちはあの場所から逃げるように車で山を下り、国道に戻った時には夕陽が沈みかけていた。
後日、廃道の入口は頑丈な門で封鎖され、もう二度と近づくことはなかった。
なぜあんな光景を見たのか、あれが現実だったのか、今でも答えは出ていない。
ただ、あの異界の建物――そして柱に打ち付けられた人間の耳のことは、20年経った今も忘れられないままだ。
不思議な話:「人間の耳が打ち付けられた柱――廃道の先の異界体験」
「人間の耳が打ち付けられた柱――廃道の先の異界体験」
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