「未知へ踏み出す勇気と、境界線を見極める知恵」

20年前の出来事を振り返ると、何気ない大学生活の中で私は、友人たちと共に廃道を探索するという、少し危うい冒険に身を投じました。
目的もなく、ただ日々を過ごしていた私たちにとって、その冒険は新鮮な刺激であり、仲間との絆を感じる時間でもありました。
しかし、思いがけない異様な場所――巨大な茅葺きの建物や、異様な柱、人間の耳、蝋燭の並ぶ空間――に遭遇したとき、私たちははじめて自分たちが越えてはならない一線を踏み越えたのかもしれないと気づいたのです。

この体験から得た気づきは、一見すると「好奇心は危険を招く」という表面的なものかもしれません。
しかし、もう少し深く考えてみると、「自分たちの選択がもたらす結果を想像する力」、そして「未知と向き合う際に必要な慎重さ」の大切さに思い至ります。
人は時に、無目的な日常や退屈さから逃れるために、少し危険な刺激や非日常に惹かれがちです。
けれど、その一歩が思わぬ世界や、戻れなくなる境界線を越えてしまうこともあるのです。

また、仲間と行動することの心強さと同時に、それが集団心理となって歯止めを失い、危険に気づきにくくなる側面もあります。
これは日常の人間関係や仕事、人生の選択でも同じことが言えるでしょう。
「みんながいるから大丈夫」という思い込みが、判断力を鈍らせることもあるのです。

この話は、未知の世界への扉が開かれているとき、そこに足を踏み入れるかどうかを選ぶのは自分自身だということ、そして「引き返す勇気」もまた重要な選択肢であることを教えてくれます。
時には、「もう少しだけ進みたい」という好奇心を抑え、立ち止まる・戻るという判断が、後悔しない人生につながるのかもしれません。

もしあなたが何か新しいことや未知の領域に踏み出そうとするときは、
・「なぜ自分はこれをしたいのか？」と一度立ち止まって考えてみる
・「この先にどんなリスクがあるか」を仲間と冷静に話し合ってみる
・「引き返す」という選択も、自分に許しておく
といった小さな実践を心がけてみてください。

私たちの日常の中にも、境界線はたくさん存在しています。
仕事、友人関係、SNSでの発信、あるいは自分の心の中の領域…。
その境界を越えるとき、好奇心や勇気だけでなく、「ここを越えても大丈夫か」と自分に問いかける慎重さもまた、人生をより豊かにしてくれる知恵ではないでしょうか。

あなたにも、「あのとき引き返してよかった」「あの一歩を踏みとどまってよかった」と思う経験があるかもしれません。
あるいは、「なぜあの時、あえて一歩踏み出せたのか」を思い出してみるのも良いでしょう。
どちらの選択にも学びがあり、その経験が、これからの人生の選択をもっと自分らしいものにしてくれるはずです。

最後に――未知に出会うとき、好奇心と慎重さ、その両方を大切にできる自分でありたい。
そんな気持ちを、この体験から今も大切にしています。