■【起】〜無為な日々と廃道探索の誘い〜
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今から20年ほど前、俺は大学生で、夢も目標もないまま、ただ毎日をやり過ごしていた。
周囲に超常現象に詳しい人もおらず、自分の体験をどう捉えていいかもわからない。
そんな俺の唯一の楽しみは、同じく目的もなくくすぶる仲間、KとSと共にドライブすることだった。
しかしその遊びにも飽き始めた頃、俺たちは新たな刺激を求めて「廃道」を探索することを思いつく。
廃道とは、すでに誰も使わなくなった道路のこと。
俺たちはKのジムニーで、行ける範囲の廃道を見つけては走り回っていた。
予想外にこの遊びは楽しく、日々の退屈を忘れさせてくれた。
■【承】〜封じられた道と不穏な兆し〜
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ある日、Kが「新しい廃道を見つけた」と言い出し、俺たちは興味津々で向かうことにした。
大学から車で30分ほどの山道。
細い道に入ると、そこが明らかに使われていないことがわかったが、100メートルほどで行き止まりになった。
Kは土砂崩れ防止用のコンクリートの土留めが途切れた場所を指し、「ここから入れる」と言う。
金網は針金で簡単に固定されているだけだったので、Kがニッパで切って俺たちは中へ。
悪事をしている感覚はなく、どうせすぐ進めなくなるだろうと軽い気持ちだった。
だが意外にも道はかなり整備されていて、俺たちはそのまま進み、やがてトンネルをくぐる。
トンネルの向こうで道が荒れ始めた矢先、Sが「おい、あれ見ろ!」と叫ぶ。
なんとトンネルの出口に鳥居が建っていたのだ。
不気味さを感じつつも、俺たちはさらに奥へと足を進める。
道は舗装から土に変わり、祠のようなものも見え始めた。
不安と好奇心が入り混じり、引き返す選択肢は消えていた。
■【転】〜異界への迷い込み、恐怖の頂点〜
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しばらく進むと、広大な平野が目の前に広がった。
どこまでも続く景色に圧倒されつつも、ここが一体どこなのか、現実感が薄れていく。
道の先には黒く巨大な茅葺きの建物があった。
車を停めて外に出ると、空は澄み切り、妙な清々しささえ感じた。
しかし、建物の異常な大きさと雰囲気が俺たちの足をすくませる。
恐る恐る中を覗くと、広い空間に異様に太い柱が立ち、その柱にはお札と人間の耳が打ち付けられていた。
俺もKも恐怖に駆られ、慌てて外に飛び出す。
Sの姿を探して建物の裏に回ると、無数の蝋燭が並び、異様な光景が広がっていた。
Sが「太陽ってどこに出てるんだ?」と不安げに指摘し、俺たちはここが明らかに普通ではない場所だと気付く。
言い知れぬ恐怖に駆られ、俺たちは一目散に車に戻り、来た道を必死で引き返した。
■【結】〜封印と消えない余韻〜
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国道に出ると、夕陽が沈みかけていた。
現実に戻れた安堵と、あの出来事が本当にあったのかという実感が入り混じる。
その後、俺たちの身に特別な異変は起きていない。
しかし、あの日の体験は今も鮮明に残っている。
再びあの廃道の入り口を訪れると、そこは頑丈な門で固く封鎖されていた。
もちろん、もう二度とあの道に足を踏み入れるつもりはない。
だが、あの時見た景色と異様な感覚は、今も俺の心に深く刻まれている。
不思議な話:廃道の彼方で見た異界――日常から逸脱した不可解な体験
廃道の彼方で見た異界――日常から逸脱した不可解な体験
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