涙のバースデーディナー～別れのフレンチレストラン～

○夜の街・待ち合わせ場所（夜）

N：一週間前、彼女の誕生日。

（BGM：静かなピアノが流れ始める）

登場人物
・俺（28・会社員・やや不器用な性格）
・彼女（27・明るく優しい雰囲気）

俺：（スマホを確認しながら）（少し緊張しつつ）
「…あ、来た」

（彼女が笑顔でやって来る）（しかしどこか不安げな様子）

彼女：（微笑んで）
「ごめん、待った？」

俺：（首を振って）
「いや、大丈夫。
行こうか」

（2人、並んで歩き出す）

○フレンチレストラン・店前（夜）

（ライトアップされた店の前で立ち止まる）

彼女：（目を見開いて）（驚きと感動が混じる）
「ここ…覚えててくれたんだ…」

（涙がにじむ。
俺は照れくさそうに微笑む）

俺：（苦笑しながら）
「うん、行きたがってたでしょ？」

（そっと手を差し出し、店内へエスコートする）

○同・店内（夜）

（高級感のある店内。
ウェイターが席に案内する）

SE：グラスがかすかに触れる音

（2人、テーブルに着席）

（彼女は涙をこぼし続ける）

俺：（困惑しつつ）（ウェイターに軽く会釈）
「…大丈夫？　誕生日だし、泣くなよ」

彼女：（声を震わせて）
「…違うの、違うの…」

（涙が止まらない）

俺：（小声で、優しく）
「ほら、ハンカチ…」

（サラダが運ばれる。
彼女は手をつけず、ただ涙）

（周囲の客がちらちらと視線を送る）

俺：（少し声を張って）（周囲を気にしながら）
「そんなに泣くなって。
今日は特別な日だろ？」

（BGM：ピアノ、さらに切なく）

彼女：（急に顔を上げて）（大きな声で）
「…別れたいの、ごめんね！」

（店内、一瞬静まり返る。
周囲の客、会話を止める）

俺：（呆然と）（声が裏返る）
「え…？　ちょ、ちょっと落ち着こう。
ワインでも…」

彼女：（涙声で）
「ごめんね！　本当にごめん！」

（彼女、席を立ち店を飛び出す）

SE：椅子が床を擦る音

（俺、呆然。
周囲の視線に固まる）

（ウェイターがスープを運んでくる）

ウェイター：（小声で）
「スープでございます」

（俺とウェイター、目が合う）

俺：（無理に笑って）（スプーンを手に取る）
「…おいしそうですね」

（心の声）
俺：（心の声）（下を向いて）
『死にたい…』

（しかし、苦笑いのままスープを一口）

N：なぜか、俺はそのままコースを食べ続けた。

（メインの肉料理が運ばれる）

○同・テーブル（少し後）

（俺、肉を口に運ぶ。
ふと後ろを振り返る）

（彼女が入口に立っている）

俺：（驚いて、立ち上がり）（優しい声で）
「心配したよ…どうしたの？」

（彼女、無言で椅子に置き忘れたスマホを掴む）

（目も合わせず、再び店を飛び出す）

SE：ドアが閉まる音

（店内、再び緊張感が走る）

ウェイター：（そっと近づき、小声で）
「デザートは…どうされますか？」

（俺、しばし考え込み、うつむく）

俺：（目を伏せて）
「無しの方向で…」

（立ち上がり、会計へ向かう）

N：フラれた悲しみより、視線が痛かった。

○店外・夜道（直後）

（夜風が吹く。
俺、一人立ち尽くす）

N：合計2万円だった。
店の優しさが、また痛かった。

（画面暗転）

○自宅・リビング（1週間後・夜）

（俺、ソファに一人。
テレビもつけず、静かな部屋）

N：そんな一週間が過ぎた。
だけど俺は、元気だ。

（カメラ、ゆっくり俺の表情にズームイン）

（BGM：フェードアウト）