怖い話:雨の日の通路に立つひと

雨の日の通路に立つひと

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○大学近く・アパート前(夕方・小雨)

(BGM:静かに降る雨音)

N:大学生活も慣れてきたある日、僕たちは友人の新居を訪ねることになった。

(傘をさした若者たちが、アパート前に集まる。
袋に酒やつまみを手にしている)

○同・アパート入り口(続き)

(階段の前で荷物を置き、傘を畳む)

SE:傘の水滴が地面に落ちる音

友人A(20・明るい性格):「わぁっ!」

(驚いて一歩下がる)

私(20・普通の大学生):「どうした?」

友人A(やや顔をこわばらせて):「いや…ちょっと、びっくりしただけ…」

(友人Aが奥の通路を指差す)

(全員、そちらに顔を向ける)

(BGM:不穏な低音)

(通路の奥、薄暗い電灯の下に黒い服の女性(30代後半・長い髪・無表情)が静かに立っている)

(女性は動かず、遠くを見つめている)

(しばし沈黙)

私(そっと会釈しながら):「……」

(他の友人たちも小さく頭を下げ、階段を上る)

○アパート・友人Bの部屋(夜)

(部屋の中、全員が床に座り、買ってきた酒やつまみを広げる)

SE:缶ビールを開ける音

友人B(20・この部屋の住人):「さっきの人、見た?」

友人C(20・おしゃべり):「うん、めっちゃ不気味だったんだけど…」

私(小声で):「あの人、住人なのかな」

友人A:「住人なら、部屋戻るよね。
あんなとこずっと立ってないでしょ」

友人B(苦笑しながら):「やめてくれよ、そういう話…」

(BGM:和やかに戻る)

(皆、酒を飲みながらゲームで盛り上がる)

(時間経過)

○同・部屋(深夜)

(テーブルの上には空き缶。
時計は深夜を指している)

友人C:「酒、なくなったな」

友人A(立ち上がりながら):「じゃ、コンビニ行ってくるわ」

友人C:「俺も行く!」

私(座ったまま):「俺は待ってる」

(友人Aと友人Cが出ていく)

○同・部屋前(数分後)

(ドアが開き、友人Aと友人Cが慌てて戻ってくる)

友人A(小声で・戸を閉めながら):「やっぱり…皆で行こう」

友人C(声を震わせて):「まだ、さっきの女の人が…いる」

(間)

友人B(ため息交じりに):「そんな…まさか…」

私(冗談めかして):「肝試しだな。
行こうか」

(全員で静かに階段を下りる)

○アパート・通路(深夜)

(SE:雨音が強くなる)

(通路の奥、同じ女性が同じ場所に立っている。
微動だにしない)

(全員、息を飲む)

友人C(囁くように):「…まだいる…」

私(酒の勢いで・一歩踏み出し):「……挨拶、してみる?」

(BGM:緊張感)

(しかし、女性は無表情のまま遠くを見ている)

(誰も声をかけられず、そのまま外へ)

○帰り道(のち・雨が止む)

(アパートに戻ると、女性はいなくなっている)

友人A(ほっとしたように):「…いない…」

私(小声で):「なんだったんだろうな…」

○翌朝・アパート前(晴れ)

(荷物を持ち、友人たちと別れる)

N:結局、その夜は何も起こらなかった。

○数日後・大学キャンパス(昼)

(友人Bが、私に声をかける)

友人B(落ち着かない様子で):「…俺さ、引っ越そうと思ってる」

私(驚いて):「え、もう? 早くない?」

友人B(目を伏せて):「…あの女の人、雨の日に必ず通路に立ってるんだ。
…怖い」

○回想・アパート通路(雨の日)

(女性がぼんやりと立ち尽くしている)

N:友人Bは一度、彼女に話しかけてみたという。

友人B(回想・勇気を出して):「あ、こんにちは…二階に越してきたんですけど…」

(女性は無反応。
じっと天井を見つめている)

(間)

○大学キャンパス(現在)

友人B(ため息混じりに):「管理会社にも言ったけど、何も変わらない。
…幽霊じゃないと思うけど…人間でも怖いよ。
…なんなんだろう…」

私(声を落として):「…大丈夫か?」

友人B(ふっと笑って):「…半年で引っ越すことにした。
…ここ、もう無理だ」

○アパート・通路(雨の日・後日)

(雨の通路、誰もいないはずの通路に、黒い服の女性が静かに立っている)

(カメラ、ゆっくりズームイン)

N:友人は去った。
あの女の正体も、理由も分からないまま――。

(BGM:静かにフェードアウト)

N:彼女は今も、雨の日の通路に立ち続けているのだろうか。
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