怖い話:雨の日にだけ現れる女――静かなアパートの不気味な影

雨の日にだけ現れる女――静かなアパートの不気味な影

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■【起】〜新居への訪問と不穏な出会い〜
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大学時代、友人が新しく引っ越したと聞き、私たちは軽い気持ちで数人集まり、そのアパートを訪ねることにした。
三階建てで、ごく普通の学生向けの下宿。
新築でもなく、特別古びてもいない、どこにでもあるようなアパートだった。

当日は小雨が降っており、私たちは近所のスーパーで酒やつまみを買い込み、荷物を手にアパートに到着した。
狭い階段の脇で傘を畳んでいるとき、友人の一人が突然「わぁっ」と声を上げた。

驚いて視線を向けると、薄暗い通路の奥に、黒い服をまとい長い髪を垂らした女性がじっと立っていた。
30代か40代くらい、白い顔がぼんやりと浮かび上がる。
彼女はこちらを見ているわけでもなく、ただ遠くを見つめているようだった。

私たちは小さく会釈し、少し気まずい雰囲気のまま二階の友人の部屋へと上がった。

■【承】〜語られる違和感と広がる不安〜
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部屋に入ると、すぐにさっきの女の話題になった。
「下に不気味な人がいたよね」「あそこで何してるんだろう」と皆が口々に言う。

住人の友人は「怖い話はやめてくれ」とむすっとしていたが、私たちは興味半分、不安半分で話を続けた。
酒を飲み、ゲームに興じるうちに、いつしか女のことは忘れかけていた。

夜が更け、酒が尽きたので友人二人がコンビニに出かけることに。
私は部屋で待っていたが、5分も経たないうちに二人は戻ってきた。
「やっぱり皆で行こう」「まだあの女がいて怖い」と、彼らは明らかに怯えていた。

肝試し気分も手伝い、皆で再び階段を降りる。
すると、奥の通路にはやはり、さっきと同じ場所に女が立ち続けている。
何時間も微動だにせずそこにいる姿は、常識では説明がつかない異様さだった。

その帰り道、酒の勢いで「挨拶でもしてみよう」と提案したが、戻ってみれば彼女の姿はもうなかった。
妙な安堵感と共に、その夜は静かに更けていった。

■【転】〜雨の日に現れる女の謎と恐怖の頂点〜
───────

翌朝、何事もなく私たちは帰宅した。
しかし後日、住人の友人が「引っ越しを考えている」と言い出した。
「もう?早すぎない?」と私たちは驚いたが、理由を聞くと、あの女のことだという。

雨の日になると、必ずあの女性が通路に現れる。
雨がやむと、いつの間にか消えている。
最初は住人だと思っていたが、どの部屋にも帰る様子がない。
異常な雰囲気に、友人は耐えきれなくなっていた。

勇気を出して「こんにちわ、二階に越してきました」と声をかけてみたこともあったが、女は何も答えず、ただ天井を見上げて立ち尽くしていたという。
管理会社に相談しても、状況は変わらない。

「幽霊じゃないと思う。
ちゃんと生身の人間だ。
でも、雨の日に必ずあそこに立っている…怖くないか?」友人の言葉に、私もあの日の異様な光景を思い出して背筋が寒くなった。

■【結】〜正体の分からぬまま残る静かな恐怖〜
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結局、友人は半年も経たずにアパートを引っ越した。
あの女が誰なのか、なぜ雨の日だけ現れては消えるのか、その理由は最後までわからなかった。

今も、あのアパートの薄暗い通路には、雨の日だけ静かに佇む女がいるのかもしれない。
何もされていないとはいえ、得体の知れない不安だけが、いつまでも心の奥に残っている。
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