不思議な話:夏休み、裏世界の扉が開くとき

夏休み、裏世界の扉が開くとき

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○回想・小学校のグラウンド(夏・昼下がり)

N:誰しも、子どもの頃に一度くらい、説明のつかない不思議な体験をしたことがあるだろう。

N:それは、忘れもしない小学校5年生の夏休みだった。

○グラウンド・隅

SE:蝉の声、遠くで子どもたちの笑い声

主人公・タケシ(11・好奇心旺盛な少年)、ノートと鉛筆を手に昆虫を探している。
(地面を覗き込む)

タケシ:(小声で)こっちにはアリ…あっ、バッタもいるな…

(タケシ、不意に錆びた鉄の扉に気付く)

タケシ:(目を輝かせて)…なんだろう、これ。

(扉をそっと開けると、内部に下りる梯子が現れる)

SE:ギイィ…(扉のきしむ音)

タケシ:(少し戸惑いながらも好奇心に負けて)…面白そう。
(その場を離れる)

○自宅・玄関

(タケシ、懐中電灯を手にして再びグラウンドへ走る)

○グラウンド・扉の前(続き)

(タケシ、懐中電灯をつけて梯子を慎重に下りる)

SE:金属の梯子を降りる音

○地下通路

(タケシ、狭い空間に降り立つ。
床は金網。
下を流れる水の音)

SE:静かな水音

タケシ:(鼻をひくつかせて)…臭くない。
下水じゃないのかも。

(懐中電灯で足元を照らし、通路を前に歩き始める)

N:わけもなく、胸が高鳴った。

○地下通路・奥

(20メートルほど進むと、鉄格子に行く手を阻まれる。
脇には梯子)

タケシ:(小さくため息をついて)がっかりだな…もっと凄いものが見られると思ったのに。

(梯子を上る)

○地上・グラウンド(夕暮れ)

SE:ヒグラシの声

(タケシ、外に出ると空はオレンジ色に染まっている)

タケシ:(きょろきょろして)…え?もう夕方?

N:昼過ぎに入ったはずなのに、外はすっかり夕焼け色だった。

(タケシ、慌ててグラウンドを後にする)

○町内・通学路

(いつもと少し違う風景。
駄菓子屋が見知らぬ民家、公民館が病院に変わっている)

タケシ:(首を傾げて、不安そうに辺りを見回す)

タケシ:(心の声)…なんか変だ。
ここ、俺の知ってる町じゃない。

SE:自転車のベルの音(どこか違和感のある響き)

(タケシ、急ぎ足で家へ向かう)

○自宅・前

(大きなサボテン、奇妙な赤い車、玄関脇にレバー、四つ足の置物)

タケシ:(立ち止まり、驚いた顔で家を見つめる)

タケシ:(心の声)…でも、表札はうちの名前だ。

(息を呑みながら裏手へ回る)

○自宅・台所の窓の外

(窓から中を覗くと、紫の甚兵衛を着た父親と学校の音楽教師が談笑している)

タケシ:(凍りつく)(心の声)…まるで、ドラクエ3の裏世界みたいだ。

○グラウンド・扉の前(再び)

(タケシ、息を切らして戻ってくる)

タケシ:(震える手で扉を開ける)

SE:扉のきしむ音

(必死に地下通路を駆け抜ける)

タケシ:(声を震わせて)お願い…戻して、元の世界に…

○グラウンド・地上(夜)

(タケシ、扉から飛び出す。
辺りは静かで、元のグラウンドの風景が戻っている)

タケシ:(しばらく地面に座り込む)(息をつき、安堵の表情)

N:それ以来、僕は二度とあのグラウンドには近づけなかった。

○現在・自動車内(昼)

タケシ(30・会社員)が車を運転しながら、窓の外にかつてのグラウンドを見つめる。

N:半年前、仕事で近くを通ったとき、グラウンドはまだそこにあった。
でも、怖さがフラッシュバックして近づくことはできなかった。

○車内(続き)

タケシ:(遠くを見つめて、ほろ苦い微笑み)

タケシ:(心の声)あれは夢だったのかもしれない。
でも、なぜか細部まで、今も鮮明に覚えているんだ。

(BGM、静かにフェードアウト)
読了
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