○自宅・兄弟の部屋(早朝)
(薄明かりの中、ベッドが二つ並ぶ。
長男のベッドは空。
主人公〈中2・陸上部、素朴な顔立ち〉が目を覚ます)
N:あれは、四つ下の弟がまだ小四だった夏のことだ。
SE:目覚まし時計のベル
主人公:(あくびをしながら、弟のベッドを見る)
(ベッドに弟の姿はない。
少し不思議そうに首を傾げる)
主人公:(心の声)
またトイレか…?
○自宅・玄関(早朝)
(主人公が外に出る。
玄関の鍵がしっかり閉まっている)
SE:玄関のドアが開く音
○自宅・庭(早朝)
(弟〈小4・小柄であどけない顔〉が芝生の上で寝ている。
主人公、驚いた表情で駆け寄る)
主人公:(驚いて)
おい!何してんだよ、こんなとこで…
弟:(ぼんやり目をこすりながら)
……うーん……?
(主人公、苦笑しながら弟を軽く揺する)
○道(早朝・ランニング中)
(主人公と弟、並んでランニング。
弟はまだ眠そう)
N:今思えば、あのとき玄関には鍵がかかっていた。
どうやって外に出たんだろう――。
(画面暗転)
○自宅・兄弟の部屋(夜)
(主人公が勉強している。
ふとベッドを見ると、弟がいない)
SE:静かな夜の空気
(主人公は部屋を出て家中を探す)
○自宅・リビング(夜)
(机の下に弟が丸くなっている。
主人公、慎重に近づく)
主人公:(小声で)
……またかよ。
N:それからも、弟は時々いなくなって、家の中で見つかることがあった。
まるで、何かから隠れているみたいに――。
(フェードアウト)
○自宅・リビング(正月・昼)
(家族4人がこたつを囲む。
母〈40代・優しい雰囲気〉が笑顔で話す)
母:(懐かしそうに)
あんたたち兄弟、みんな夢遊病の癖があったんだよ。
主人公:(驚いて)
え?俺も?
母:(頷く)
うん、覚えてないの?兄ちゃんもよ。
主人公:(兄〈高1・寮生活、しっかり者〉を見て)
兄さんも?
兄:(苦笑しながら)
全然覚えてないな。
N:自分が夢遊病だったなんて知らなかった。
兄貴も。
(間)
○兄弟の部屋(夜)
(主人公、兄と二人きり。
静かな空気)
主人公:(声を潜めて)
なあ…昔、同じ夢何回も見たことない?かくれんぼの夢。
兄:(思い出すように)
あー…小学生の頃、何回か見たな。
主人公:(少し戸惑いながら)
一緒にかくれんぼしてた子に誘われたことない?「川原に行こう」って。
兄:(目を細めて)
…言われた。
でも断ったよ。
主人公:(ゆっくり頷き)
俺も断った。
最後、その子に言われなかった?「じゃいいや。
弟と行くから」って。
(間。
二人、静かに見つめ合う)
N:その夢を見なくなったのは…あの頃からだった。
(フェードアウト)
○自宅・玄関前(十二月・朝)
(主人公がランニングから帰宅。
家の前に救急車が停まっている)
SE:サイレンの音
(主人公、愕然と立ち尽くす)
N:あの日、俺がランニングから帰ると家に救急車が来ていた。
布団の中で、弟は冷たくなっていた。
○自宅・リビング(夜)
(主人公と兄、薄暗い部屋で黙って座っている)
主人公:(目を伏せて、静かに)
弟も…あの夢、見てたのかな。
川原に行ったのか、それとも…。
兄:(声を震わせて)
…分からない。
でも、誰にも話すな。
主人公:(小さく頷く)
これは、俺たちだけの秘密だ。
(BGM:切ない曲調に変わる)
N:そう、来月は弟の十三回忌。
あの夏の日の約束も、もう誰にも話さない。
(カメラ、ゆっくりズームアウトしていく)
(フェードアウト)
不思議な話:夢遊びの川原 ― 兄弟三人、夏の日の約束 ―
夢遊びの川原 ― 兄弟三人、夏の日の約束 ―
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