■【起】〜静かな夏の朝、不穏の種〜
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これは4つ下の弟の話だ。
当時、小学4年生の弟、俺は中学2年生、そして兄貴は高校1年生だった。
兄貴は寮生活で、家にほとんど帰ってこない。
俺は陸上部で毎朝ランニングをしていた。
ある夏の日、いつものように早起きした俺は、弟の姿がベッドにないことに気付く。
トイレかなと気にせず外に出ると、弟は家の外で寝ていた。
不思議に思いながらも、弟を起こしてランニングへ出かけた。
そのとき、玄関には鍵がかかっていたことに、後から気付くことになる。
■【承】〜繰り返される異変と、語られた秘密〜
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弟がいなくなることは、その後も時々あった。
家の中で、机の下やタンスの陰など、まるで何かから隠れるように眠っていた。
そんな出来事もいつしか忘れかけていた正月、家族で思い出話をしていたとき、母が何気なく言った。
「お前たち兄弟には夢遊病の癖があったんだよ。
」
自分が夢遊病だった記憶はなく、兄貴のことも知らなかった。
だが、母の言葉をきっかけに、心の奥に引っかかっていた何かが動き出す。
■【転】〜夢の真相と、選ばれた弟〜
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ふと思い出し、兄貴だけに尋ねてみた。
「昔、同じ夢を何度も見たことない?かくれんぼする夢。
」
兄貴も、小学生のころ何度か同じ夢を見たという。
かくれんぼをする子供に「川原に行こう」と誘われたが、行かなかったと。
俺も断った、と伝えると、兄貴は「最後にその子に『じゃいいや。
弟と行くから』と言われた」と言う。
その夢を見なくなったのは、ちょうどそのころからだった。
■【結】〜十三回忌の朝、残された秘密〜
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来月は弟の十三回忌だ。
十二月の寒い朝、ランニングから帰ると家に救急車が来ていた。
母が布団の中で冷たくなった弟を見つけたのだ。
弟が同じ夢を見ていたのか、川原へ本当に行ったのか、あるいは末っ子だから選ばれたのか、今も分からない。
ただの心不全だったのかもしれない。
けれど、あの夢の話は親には絶対に話さない。
これは俺と兄貴だけの秘密である。
不思議な話:夢の中のかくれんぼと、弟だけが選ばれた朝
夢の中のかくれんぼと、弟だけが選ばれた朝
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